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内容紹介(Amazon)

ひきこもりの大学生、疋屋コモルと、幼なじみ浦岡クミが挑む日常の謎シリーズ。紛失した財布のありかを当てる「懸賞シール」、遊びから抜けた小学生の行動を予測する「11人いる!」、町内に出没する袋男の正体を探る「袋男」、シスコンの弟が挑む推理クイズ「一万円当たります」の4短編を収録。

この引きこもり、ただ者ではない。

新年一発目レビューをして、気が付けば2月も終わりという大胆なタイムトラベル。
一体、お前は何をしていたんだといえば、ちょっとした蟹工船な感じで、色々ごった返しておりました・・・
もうちょっと頑張ります。m(_ _)m



さて、という訳で(?)、そんな中でも色々と読んだ中で、ご紹介したい作品ありけり。
本作「ものぐさ探偵の事件簿」でございます。

探偵と言って頭に浮かぶのは、じっちゃんの名にかけて真実は一つ的な人たちな訳ですが。
彼らの特性は、何と言っても事件との遭遇率。
もういっそお前が犯罪発信源なんじゃねえかと警察に随時尾行されてもおかしくないレベルです。
しかし、本作の「探偵」こと疋屋コモルはそれとは一線を画しております。

先生、この人、
ひきこもりです。

ひきこもりが事件に遭遇するわけがありません。
事件は会議室でも現場でも起きる訳がなく、むしろ自室以外のどこで起きるんだと設定の時点で激しいパラドックスを秘めております。
・・・というのは、読む前の個人的な意見としまして。

本作は、世にいうミステリーの定番たる密室殺人や怪盗との闘いといった華々しいドラマではなく、
作品紹介にもあります通り、ひきこもりの大学生 疋屋コモルと、幼なじみ浦岡クミが日常の中で出会う謎を解き明かす、まさしく日常系ミステリー」となっております。

当然、ひきこもり探偵が主人公とあれば、舞台はほぼ自室なのですが、
ここで感嘆すべきは、まったく飽きないという点。

形態としては、短編が4話収録されている訳ですが、
ほぼ同じシチュエーションであるのに、登場キャラや謎解きの対象によって、実に多様な特色が出ております。
その全てが日常のありふれた事象の中に現れる謎や事件なのですが、
派手さがない分、純粋に「どういうこと?」から始まり、「あーそういうことか!」と膝をたたいてしまう謎解きゲームに近い感動があります。

また、この主人公コモルが飄々と事件を解決(?)するもので、常に解決編を読んでいる感覚となり、それがある種の爽快感を生み出しております。
勿論、物語が語られる上で、シーンやキャラクター描写に無駄がなく、内容を把握しやすいという点も、更に楽しめる要因となっていると思います。


これは単なる勝手な想像ですが。
最終話の「一万円当たります」の最後につきましては、
作者であるところの稲葉様の「ドヤッ」的な何かが頭を掠めていきました。


実に、お見事でございました。




作家さん情報(Amazon)

著者:稲葉 孝太郎

公式twitter:https://twitter.com/inabakotaro
小説家になろう:http://ncode.syosetu.com/n8275bv/

2年前から物書きをしています。ミステリを中心に執筆。海外文学好きで、宗教的・哲学的テーマを取り込んだものを書きたいと思っています。趣味が将棋なので、将棋に関連する小説『こちら駒桜高校将棋部』を、小説家になろうで連載しています。興味がある方はご一読ください。