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内容紹介(Amazon)

昔から、自分が切り捨てられるときは「ぐふっ」などというベタな言い回しはしたくないものだと、彼はことあるごとに仲間達に話していた。
そんなベタが、今の世界を駄目にしているのだと。
そんなベタが、社会から想像力の翼を奪っていくのだと。
                             (本文より)

幼馴染カップルたちのベタなラブラブやりとりから世界を救うために活動する、孤高な男たちの生き様を描いたハードボイルド短編(疑問)『幼馴染撲滅委員会』

幼馴染がベタをするとき、馴斬丸が牙を剥く!


同時収録:「迷子の女の子をみつけたので、陵辱してやることにした。」から始まるハートフルラブストーリー、『僕のなかの悪意らしきなんとかかんとか』

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文庫本換算:52ページ
※本作品は2chのスレ/コピペから着想を得た生粋のネタ小説です。ご了承ください。


この物語は悪ノリの歴史だ。だがそれがいい。とてもいい。

随分、昔の話になりますが、「新世紀エヴァンゲリオン 」最終話 「世界の中心でアイを叫んだけもの」の中盤、突然に始まった学園エヴァ物に度肝を抜かれました。
正式には、食パン齧って快活に走ってくる綾波レイという、ある意味、むしろこれがサードインパクトでした(※筆者談)なシーンに、心底日本と自分の将来を案じたことを記憶しております。

えー、という訳で(?)、「幼馴染撲滅委員会」です。
これまでにいくつも作品を拝読している作家さんの一人、針とらさんの作品ですが。
読み始め中盤差し掛かる前くらいでしょうか。
思わず口から出た一言。

 なんという悪ノリwww

タイトルから若干オーラは出ていましたが、実際読んでみると、見事に爆発しておりました。
この衝撃は「妄想戦士ヤマモト」を読んだ時に匹敵しました。
妄想全開、これ極まり。
繰り出される 学園ラブコメ系幼馴染キャラの王道(そう王道!)描写ネタの数々。淡い恋心と密かな嫉妬心が乱れる友達以上恋人未満の乱舞。春爛漫の嵐。


おそらくは君はこう思っているはずだ。
『眠っているところを勝手に入ってきた幼馴染に叩き起こされたい』と、(本文より抜粋)


・・・えっと。

な ぜ 、そ れ を 知 っ て い る !

と、針とらさんの確信犯的なネタふりに思う存分、振り回されました。笑顔で。いい笑顔で。



閑話休題。

本作は、大きく2つの物語で構成されており、いずれも2chから着想を得て描かれた物語とのこと。
『幼馴染撲滅委員会』は、同名スレから。
もう一作品の『僕のなかの悪意らしきなんとかかんとか』は2chの笑えるコピペから。
それだけの要素でここまで物語を形成するというのも凄いことだと思いますが、それ以上にノリで書き出したは良いものの終わりどころがわからなくなりそうな題材であるにもかかわらず、きちんと物語として成立しているところは流石です。
この作品は十代の頃に書かれた作品ということですが、若さ故のいい意味での暴挙とも言うべき振りぬきっぷりは、読んでいて爽快です。


『幼馴染撲滅委員会』
幼馴染という幻想『ナジミズム』に惑わされる人々。
そのナジミズムを撲滅する為、日夜暗躍する委員会とその構成員「チーズ」は、とある作戦を決行する。
それはかつての戦友「食パンマン」の暗殺だった・・・。
委員会の中でも抜きん出て優秀だった彼は、今や幼馴染に毒された、裏切り者に過ぎなかった。
「抜け駆けはイクナイ」
引き金を手にかけるチーズ。
幼馴染という幻想にとり憑かれ、その狭間で揺れる人々のハードボイルド(?)アクション。


『僕のなかの悪意らしきなんとかかんとか』
主人公 圭太の中には明確に悪意が潜んでいる。
とにかく、そのドス黒い衝動はとどまる所を知らず、彼は出会う人々全てに等しくその悪意を向ける。
「迷子の女の子をみつけたので、陵辱してやることにした。」
で始まる衝撃のラブコメ(?)ストーリー。
こんな公衆の面前で迷子として実名を晒されるなど、その辱めは死に等しいだろう。
電車で老人が立っていれば、わざわざ己の席に座らせ自由を束縛する程の極悪人の彼が、ある日、高橋春奈と名乗る女の子に出会う。
それは、遠い記憶の中。まだ彼が綺麗な心をもっていた時に出会った少女によく似た子だった・・・。


個人的には、『幼馴染撲滅委員会』でぶっ飛び、『僕のなかの悪意らしきなんとかかんとか』でもぶっ飛ぶかと思いきや、あらやだ意外といい話じゃない・・・とほっこり
強いていえば、初期阿智太郎作品が好きな方は、大好物な作品ではないかと思います。


あと、針とらさん曰く、「この作品が理解できる人はたぶん変態です」ということです。

褒め言葉にござ<凄くいい笑顔で



作家さん情報(Amazon情報)

【作家名】針とら
1982年生まれ。
東京工業大学情報工学科卒。コテコテの理系のくせに何故か小説を書くのが好き。現在はソフト屋さん。

全滅した少年たちの謎の真相を追う架空戦争史の虐殺サスペンス「すべて裏切者のしわざ」で第八回講談社BOX-AiR新人賞最終選考。
描いた絵を召喚できる男の子と描かれた絵画獣の友情冒険バディもの「らくがきウルファ!」で第一回角川つばさ文庫小説賞最終選考。

  ......人生も作風も何処に向かいたいかさっぱりと言われる。
本人は、面白ければそれでいいじゃん、と思ってるんだけど。

学生時代、フリーのサウンドノベルゲーム『かまいたちの夜2 another 煉獄』を制作。
http://www3.to/kamaitachi-rengoku/
ブログ:http://www.varitra.info/


幼馴染撲滅委員会幼馴染撲滅委員会 [Kindle版]
著者:針とら
出版:針とら黒文庫
(2013-03-16)