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内容紹介(Amazon)

2020年代のそう遠くない未来。コンピュータが発達し、ナノテクノロジーを一般的に使うようになった世界。ナノテクノロジー技術を扱う工場に勤めなが ら、「公安の狗」としての仕事も引き受けて生きなければならない宇治見陽介。上海で起きたテロリストが日本に侵入し、それに関連する女の監視役の仕事を受 けることになる。その薄幸の女に監視役の宇治見自身が、惹かれるようになっていく。しかし、そこには深い壁があった……。

コンピュータが発達した世界で、人はどういう気持ちで生きることになるのか、世界が変わりつつある中での孤独や愛情の姿を描く。

「日本経済新聞電子版ゲーム読解」や「ビジネスファミ通」などの連載を持つ筆者が、コミティアで少部数発売され、ゲーム開発者から高い評判を得ていた作品の大幅改訂版。


近い未来。人間が機械的世界に侵食される中、この恋はきっと起きるだろう

精神という未だ科学的に全容が解明されていない世界。
人と機械を切り分ける唯一の不可侵領域が、未来の機械技術によって管理されるというストーリーは、「攻殻機動隊」を始めとするSF作品においてモチーフの一つとして取り上げられます。
(この「機械」という単語。古さを帯びる言葉ではありますが、コンピューターやAIというそういう概念っぽい単語を総括しているように思います)

・・・最近の技術を見ていると、近い将来、自分の首にコネクタをぶっさす時が来ても不思議ではない様な気もしていますが。。。


本作「宇治見陽介の眼」は、そんな近未来において人間が機械に支配されかかっている節目の様な時代の日本(東京)を舞台としております。
数十年後の日本に起こりえるであろう社会背景を含め、舞台描写がリアルなのが印象的です。

「ビヨンド」というAI型のデータベースサーバ(必要な情報を世界中のネットワークから検索して、その処理を行うプログラム)と人間が直結していたり、「ナノボット」という極小のロボットを人間の体内に打ち込み、内臓器官や筋肉組織といった体機能に付加を与えている等、実に近未来SFらしさのあるモチーフも魅力の一つと言えます。

本作のタイトルにもなっている主人公、「宇治見陽介」はそんな世界の中で、妹の病気からお金が必要となり、裏社会に足を踏み入れることになります。
「公安」という治安維持組織の末端活動員として。

何というか押井守テイストにも似た設定に、個人的に冒頭箇所でゾクゾクします。

普段は一般の工場の人間として働く彼は、任務に応じて公安の末端として活動します。
そして、今回、本作のストーリーの本流とも言える任務が、とあるテロリストに関係のあった女性の監視でした。
女性を監視する内に、宇治見陽介の心に恋心にも似た感情が芽生え、数々の出来事を切っ掛けに、彼は驚きの行動と取ることになります・・・。

SF要素、公安、任務、監視という点で、スパイアクションを想像しかけましたが、予想とは少し違いました。
勿論、そういう要素も不断にあり、ドキドキでいっぱいです。
しかし恐らくですが、本作のテーマはSFではなく。
むしろこれらの重厚なSF設定こそ一つの要素であって、その進化の途上にある人間社会が生んだ恋こそ、本作の魅力という気が致します。
宇治見陽介の感情。それは女性への憐憫であり、淡い恋であり、現実ではどうしようもないという諦念であり。。。
しかし、世界がネットワークの監視下におかれ、更に公安という立場で、しかも重度の病気を持つ妹の存在を背負う中で、彼がそれらの感情と葛藤する様は呼んでいてもどかしい思いをしました。

彼が終盤に下し行動する決断は、実に人間的です。

そして結末に至っては、事件の真相にまず驚き、さらに彼を取り巻く世界の奥深さに恐怖し、しかし、その中にも僅かな希望は確かにあったとホロリときました。


もっとこの辺り詳しくご紹介したいところですが!
事の結末はぜひ、本作を読んで思いを共有していただければ・・・!

近未来SFの中で、展開される恋物語。読んで損は、ありません。


作家さん情報(Amazon情報)

【作家名】新 清士
公式ブログ:新清士 オフィシャルブログ(http://blog.livedoor.jp/kiyoshi_shin/)
公式ツイッター: Kiyoshi Shin 新清士@kiyoshi_shin

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作者の新 清士さん、内容の経歴の時点で「すごい人なんだなー」とか思ってましたが。やっぱり凄い作家さんでした。要チェックやで!
宇治見陽介の眼宇治見陽介の眼 [Kindle版]
著者:新 清士
出版: 新清士
(2013-02-02)